短期成果を追いながら、同時に未来のブランドを育てる。おやつカンパニーのブランド戦略とは【導入事例】
短期成果を追いながら、同時に未来のブランドを育てる。おやつカンパニーのブランド戦略とは【導入事例】
最終更新:
2026/8/7

多くの人が一度は口にしたことのあるロングセラーブランド「ベビースター」を展開する株式会社おやつカンパニー。
今回は、常務執行役員 マーケティング本部長 赤沢佳代氏に、高い認知率を誇るブランドだからこそ直面していた課題と、短期成果と向き合いながらブランドを育て続ける同社の戦略について伺いました。
生活者から選ばれ続けるために、店頭での接点や日常的なブランド体験をどのように設計しているのか。また、社会体験アプリ「ごっこランド」を活用したファミリー層との新たな接点づくりや、その成果についてもご紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
※本記事は、2026年6月26日に「マーケティングWEEK夏2026」で開催されたキッズスター登壇セミナー「短期成果を追いながら、同時に未来のブランドを育てる~選ばれ続けるための、おやつカンパニーのブランド戦略~」の講演内容をもとに再構成したものです。

株式会社おやつカンパニー
常務執行役員 マーケティング本部長
赤沢 佳代 氏
メルシャン、日本コカ・コーラ、日本マクドナルド、資生堂に在籍し、さまざまなブランドで市場創造やマーケティング戦略の構築・強化・実行業務を担当。2021年6月に株式会社おやつカンパニー入社、2024年8月より現職。メインブランドの「ベビースター」シリーズ他、マーケティング業務全般と、新たな価値提供の実現へ向けて様々な分野でのパートナー企業との共創に取り組んでいる。
― ベビースターは、誰もが知るロングセラーブランドですが、現在のブランドの立ち位置や、感じている課題について教えてください。
ベビースターラーメンは、当社を代表するブランドです。2025年9月に実施した10代から60代を対象とした自社調査では、ブランド名を提示した際の助成認知率は97%超、さらに認知者のうち92%が「食べたことがある」と回答しました。
認知率、喫食経験率ともに、非常に高いブランドだと認識しています。
一方で、同時期に直近1年間の喫食状況を調べたところ、「最近食べた」と回答した方は決して多くありませんでした。
認知は高く、食べた経験もある。しかし、最近では食べられていない。この状況を、私たちは大きな課題と認識しました。
なぜ食べていないのかを尋ねた調査では、最も多かった回答が「特に理由はない」でした。商品に明確な不満があるわけでも、嫌いになったわけでもありません。日常生活のなかで、購入候補として思い出していただけていないのだと捉えました。
スナック菓子は、店頭で購入する銘柄を決める方が7~8割と、別調査で把握しておりますが、これらのことから、店頭配荷を充実させることと、日頃からブランドに関わる情報を生活者にインプットすることが肝要と考えております。
― 認知率の高さに対して、購入時にブランドが思い出されにくい背景には、どのような変化があるのでしょうか。
ベビースターに初めて出会う場所として、以前は駄菓子屋が大きな役割を果たしていました。しかし、駄菓子屋の店舗数は年々減少し、直近では数千店程度ともいわれています。
現在、スナック菓子の主な購入場所はスーパーマーケットです。駄菓子屋でスナック菓子を購入する方は、複数回答でも10%未満となっています。
量販店の売り場では、袋入りのスナック菓子やポテトチップス・ポテト系スナックの商品が大きな割合を占めます。そのなかで、定番のスナック菓子商品と比較すると比較的小さめで亜流なベビースター関連商品は、棚に並んでいても相対的に存在感が低くなってしまいます。
また、別の調査では、店舗に行く前から購入するスナック菓子の銘柄を決めている方は2-3割で、多くの方は店頭の棚を見て商品を選んでいると把握しています。
「ポテトチップス以外で購入したいスナック菓子」を自由回答で尋ねた調査では、ベビースターは純粋想起で6番目でした。
ベビースターというブランドを知っていただいていても、実際に買い物をする瞬間に思い出してもらえなければ、購入にはつながりません。
棚にはあるけれど、生活者の目や意識に入りにくい。こうした状況をどのように変えていくかが、課題の一つでした。
― ベビースターと生活者との関係は、年齢とともにどのように変化しているのでしょうか。
当社では、現在40歳前後の方を対象に、子どもの頃から現在までのベビースターとの関わりを振り返るコーホート調査を実施しました。
その結果、多くの方が子どもの頃にはベビースターを食べている一方で、ティーンになるにつれて一度ブランドから離れる傾向が見られました。
その後、学生時代の集まりや、家庭を持ったタイミングで再びベビースターを手に取ってくださる方もいます。しかし、すべての方が継続的に戻ってきてくださるわけではありません。
こうしたライフサイクルを変え、ブランドとの関係をできるだけ長く継続していただくことが、私たちの目指していることです。
そのためには、普段から少しでもベビースターを頭のなかに残していただく必要があります。意外な場面でブランドを目にしていただいたり、実際に召し上がっていただく機会をつくったり、商品そのものの価値を伝えたりすることが重要だと考えました。
― こうした課題に対して、どのようなターゲットを設定し、施策を展開してきたのでしょうか。
主なターゲットとしたのは、ベビースターの喫食頻度が月1回以下の、30代から40代の子育て中の女性です。
この層をメインターゲットにしたのは、ご家庭におけるカテゴリーマネジャーの役割を担っている方が多いと考えたためです。
その方ご本人だけでなく、ご主人やお子さんにも接点が波及していくことを期待しました。
施策では、通常のお菓子売り場にとどまらず、日常のさまざまな場面でベビースターに触れていただくことを意識しています。
食に関するコラボレーションだけでなく、スニーカーやお酒、ホテルの客室など、食品・非食品を問わず、さまざまな企業やサービスと連携してきました。
普段とは少し違う場所でベビースターを目にしていただくことで、ブランドを思い出す機会を増やしたいと考えています。
一方で、単に露出を増やすだけでなく、生活者とブランドとの心理的な関係性を深めることも必要です。その取り組みの一つとして導入したのが、キッズスターの「ごっこランド」です。
「ごっこランド」は、子どもが実在する企業のお仕事や商品・サービスを題材にしたゲームを通じて、社会の仕組みを体験できるアプリです。
主な利用者は3歳から10歳の未就学児と小学校低学年で、保護者は20代から40代、なかでも30代が中心です。また、利用者の約8割が親子で一緒に遊んでいるため、子どもだけでなく、保護者にもブランドのメッセージを届けられる点が特徴です。
― 数ある施策のなかで、「ごっこランド」を導入した目的を教えてください。
当社は、2025年3月から「ごっこランド」を導入しています。
目的の一つは、駄菓子屋という従来のタッチポイントが減少するなかで、子どもたちがベビースターを知る新しい場をつくることでした。
子どもたちにブランドを知っていただき、ブランドへの興味を持ってもらうこと。保護者の方には、ベビースターを改めて思い出していただくこと。そして、親子双方の購入や、ブランドへの好意につなげていくことを目指しています。
加えて、これまで十分に伝えきれていなかった商品の価値を伝えることも、重要な目的でした。
ベビースターは駄菓子発祥の商品であるため、どうしてもジャンクなイメージを持たれやすい面があります。
しかし、実際には小麦粉と水を混ぜて生地をつくり、生地を延ばし、麺にして揚げています。食品の麺類と同じように、麺からきちんと作っている商品です。
こうした商品の成り立ちや、ものづくりへのこだわりも、「ごっこランド」のなかで子どもたちに分かりやすく伝えられるよう設計していただきました。
実際には、当初掲げていた目的を達成しているのはもちろん、それを上回る効果も見えてきています。
子どもたちが夢中になって遊ぶ姿をきっかけに、保護者の方にもベビースターへの興味・関心が広がり、お子さまの様子を通じて、ご自身が子どもの頃にベビースターを食べていた記憶を思い出す方もいらっしゃるようです。
こうした体験を通じて、ブランドへの愛着やロイヤルティがより深まっていることが分かっています。
『ごっこランド』で展開する「わくわく たのしい おやつじかん」は、2種類のコンテンツで構成されています。
一つは、麺や商品のパッケージアイコンを集め、獲得数を競う対戦形式のカジュアルゲームです。
ベビースターらしいわくわく感やコミカルな世界観に触れながら、親子で一緒に楽しめる設計になっています。
もう一つは、ベビースターの工場で商品が作られる工程を、仕掛け絵本のように体験するコンテンツです。
小麦粉と水を混ぜて麺の生地を作り、生地を延ばし、揚げた麺を砕く。出来上がった商品は店頭に運ばれる・・・といった一連の工程・流れをゲーム内で体験することで、普段食べているベビースターがどのように作られ、店頭や家庭に届いているのかを理解できるようにしています。
単にゲームを楽しむだけではなく、遊びを通じて商品の成り立ちや、おやつカンパニーのものづくりへの理解につながることを目指しました。
― 「ごっこランド」への出店後、定量面ではどのような変化が見られましたか。
「ごっこランド」出店前後のブランドリフト調査では、喫食頻度と純粋想起の双方に変化が確認されました。
おやつカンパニーでは、ベビースターの喫食頻度に応じてユーザーを分類し、喫食頻度が低い「ライト・ウルトラライト層」を第一のターゲット、1年以上ベビースターを食べていない「離反層」を第二のターゲットと位置付けています。
「ごっこランド」は、こうした層との新たな接点を創出する施策の一つとして導入しましたが、その成果として、ごっこランドユーザーの保護者を対象にした調査では、ベビースターまたはブタメンを月1回以上喫食する人の割合が9.7ポイント上昇しました。
喫食頻度の低い層やブランドから離れていた層との接点づくりにおいても、一定の成果が確認されました。
― 課題として挙げられていた、購入時の想起には変化がありましたか。
「ポテトチップス以外で最近気になるスナック菓子をお答えください」という質問に対し、1番目から3番目までにベビースターを挙げた人の割合は、出店後に18.8ポイント上昇しました。
前述の「ポテトチップス以外で購入したいスナック菓子」を自由回答で尋ねた自社調査では、ベビースターは純粋想起で6番目でしたが、ごっこランド利用者においては想起が大きく上昇し、喫食機会につながっていることが確認できました。
子どもの体験を起点としたブランド接点が、保護者の記憶や行動にもつながったことがうかがえます。
― 定量的な成果以外に、子どもや保護者からはどのような反応が寄せられていますか。
「ごっこランド」では、実際に遊んだ子どもたちから、日々さまざまな感想が寄せられています。
「ママと勝負してみたよ」や工場体験で遊んだお子さんの「一つ一つ、いろいろな工夫をしていることが分かった」といった声も届いています。
なかには、「おやつカンパニーの遊べるところに行ってみたい」という、三重県にあるテーマパーク「おやつタウン」への来園を望む声も寄せられました。
ゲームの楽しさだけでなく、商品づくりへの理解や、企業そのものへの関心が生まれていることが分かります。
― 最後に、赤沢さんは日々短期の成果とも向き合われる中で、「今の成果」と「未来の育成」の両立について、どのように考えていますか。
認知は高い、喫食経験も高い。しかし、最近は食べられていない、という現実が見えていました。
さらに、未来のユーザーである子どもたちに選ばれる場所や、ブランドと出会う理由そのものが、以前より少なくなっています。
そこで、「ごっこランド」と一緒に取り組むことで、この状況を変えられるのではないかと考えました。
導入後は、喫食頻度や純粋想起といった数値に変化が見られただけでなく、当初想定していた以上の反響があり、ブランドへの愛着も感じていただけています。
ごっこランドは単なる接触の場ではなく、お子さまには“はじめてのブランド体験”を提供する場として、保護者の方々には“購入のきっかけ”をつくる接点として機能しています。
目先の成果だけでなく、同時に、未来にユーザーをつなげ育成していくためにも意義深い取り組みだと確信しています。
― 赤沢さん、貴重なお話をありがとうございました。
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